倉庫の生産性を最も大きく左右する工程、それがピッキングです。ピッキング作業の時間の多くは「商品を探して歩く時間」に消えていると言われ、ここを改善できるかどうかで倉庫全体の生産性が大きく変わります。
本記事では、倉庫責任者として8年間、庫内改善に取り組んできた筆者が、お金をかけずに今日から始められる改善策から、レイアウト・ロケーション設計の考え方まで、実践順に解説します。
所長、ピッキングってどうしてあんなに時間がかかるんでしょう?みんな一生懸命歩いてるのに…
「一生懸命歩いてる」——そこが問題なんだぞ。ピッキングの時間の大半は商品を取る時間じゃなくて歩く時間と探す時間だ。人を速く歩かせるんじゃなく、「歩かなくていい現場」を作るのが改善の王道なんだな。
ピッキングが遅くなる3大原因
👉 現場でよくある「遅さ」の正体
- 歩行距離が長い:よく出る商品が倉庫のあちこちに散らばっている
- 探す時間が長い:ロケーション表示が曖昧で、棚の前で商品を探してしまう
- 戻り・手待ちが多い:リストの順番が動線とバラバラで、同じ通路を何度も往復する
改善はこの3つを潰す順番で進めます。特別なシステムがなくても、かなりの部分は運用の工夫で解決できます。
改善策① ABC分析で「よく出る商品」を出口近くに集める
最初にやるべきはABC分析です。出荷頻度の高い順に商品をA・B・Cにランク分けし、Aランク品を出荷口・梱包場に近いゴールデンゾーン(腰から胸の高さ)に集約します。
| Aランク(出荷の約7〜8割を占める上位品目) | 出荷口に最も近い区画・取りやすい高さに配置 |
|---|---|
| Bランク(中頻度) | Aゾーンの外側に配置 |
| Cランク(低頻度・死に筋) | 倉庫奥・上下段へ。定期的に在庫圧縮を検討 |
出荷データが取れるなら直近3ヶ月で分析し、季節品は四半期ごとに見直すのがおすすめです。筆者の現場でも、Aランク品の集約だけで1件あたりの歩行距離が体感で大きく減り、ピッキング件数が目に見えて伸びました。
改善策② ロケーション管理を「住所化」する
「あの棚のあの辺」という属人的な記憶に頼るピッキングは、新人が入るたびに生産性が落ちます。通路-棚-段-間口の4階層でロケーション番号を振り、リストにロケーションを印字すれば、入ったばかりのスタッフでも迷わず辿り着けます。
✅ 住所化のメリット
- 新人の立ち上がりが早くなる(教育コスト削減)
- 「探す時間」がほぼゼロになる
- 棚卸し・在庫移動の指示が正確になる
- WMS導入時にそのまま使える土台になる
ロケーション番号って、どういう順番で振ればいいんですか?
ピッキングで歩く順番に番号が進むように振るのがコツだぞ。番号順に歩けば自然に一筆書きの動線になる——そうすればリストをロケーション順に並べるだけで、最短ルートのピッキングリストが出来上がるんだな。
改善策③ 動線は「一筆書き」を目指す
ピッキングリストの並び順とロケーション番号を揃えると、作業者は倉庫内を一方向に流れるように歩けます。U字型(入口と出口が同じ側)や通り抜け型(I字型)など、倉庫の形に合わせて逆走・交差が起きないルールを決めましょう。
⚠️ やりがちなNG動線
- リストが商品コード順で、作業者が倉庫を行ったり来たりする
- 通路が狭く、カート同士のすれ違い待ちが発生する
- 梱包場が遠く、ピッキング後の運搬距離が長い
改善策④ 波動に合わせて「まとめ方」を変える
1件ずつ回るシングルピッキングは、件数が増えると歩行のムダが膨らみます。出荷量に応じて方式を使い分けましょう。
| 方式 | 向いている現場 | ポイント |
|---|---|---|
| シングルピッキング(摘み取り) | 多品種・出荷波動が大きい | 誤出荷が少ない。件数が増えると歩行が増える |
| マルチピッキング | 小型商品の多件数出荷 | カートで複数オーダーを同時に回り歩行を大幅削減 |
| トータルピッキング(種まき) | 同一商品を多店舗へ出す物流 | 品種ごとにまとめて取り、後工程で仕分け |
「午前は摘み取り・午後の店舗便は種まき」のように、時間帯で方式を切り替えるのも実務的な解です。
改善策⑤ 5Sは「幅」を揃えるだけでも効く
通路に置かれた空パレット、はみ出した在庫、潰れた段ボール——これらは全部、歩行速度と安全性を落とします。特に通路幅の確保と間口表示の整備は、その日から効果が出る改善です。
改善策⑥ 誤出荷対策はチェックの「場所」を変える
誤出荷が多い現場ほど、出荷前の全数チェックに人を割いてスピードを落としがちです。原因の多くはピッキング時の取り間違いなので、類似商品の隣接配置をやめる・間口に商品画像を貼るなど、間違えにくい売場づくりで上流から潰すほうが効率的です。
改善策⑦ データが取れたらWMS・デジタル化を検討
紙リストの限界(リスト印刷の手間、進捗が見えない、実績が残らない)を感じ始めたら、ハンディターミナルやWMS(倉庫管理システム)の検討段階です。ただし運用がぐちゃぐちゃのままシステムを入れても失敗します。①〜⑥の運用改善を先にやり、「今のやり方をそのままデジタルにする」状態を作ってから導入するのが鉄則です。
WMS・マテハン導入の検討記事も準備中です
ロジ現場ラボでは今後、WMSの選び方や自動化設備の比較記事も公開予定です。カテゴリ「WMS・物流DX」をチェックしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. お金をかけずにできる改善はどれですか?
A. ABC分析によるロケーション見直し、ロケーション番号の住所化、ピッキングリストの並び順変更、5S(通路確保・表示整備)は、ほぼコストゼロで着手できます。
Q. ABC分析はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
A. 基本は四半期ごと、季節商材が多い現場は月次での見直しをおすすめします。直近3ヶ月の出荷実績で分析するのが一般的です。
Q. WMSはいつ導入すべきですか?
A. 運用改善をやり切り、紙運用の限界(誤出荷・進捗管理・実績集計)が明確になったタイミングが適切です。運用が固まっていない段階での導入は失敗しやすいです。
まとめ:歩かせない・探させない・戻らせない
ピッキング改善の本質は「人を急がせる」ことではなく、歩かせない・探させない・戻らせない現場を設計することです。ABC分析→住所化→動線→方式→5S→誤出荷対策→デジタル化の順で、一つずつ着実に進めてみてください。
明日、さっそく出荷データを持ってきてABC分析やってみます!
うむ。改善は一気にやろうとせず、Aランク品の移動から始めるんだぞ。1週間後の数字の変化を見れば、現場のみんなも改善の面白さに気づくはずだ。


